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Author:牛男
■マレーシア在住の塾教師。
インターナショナルスクール
IB Japanese講師。
男性 牛男、otiani
■ことば・異文化・論作文の紹介・マレーシアの紹介がメインですが、あちこち脱線しがちです。
■2007年2月2日開設

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瑞々しさ、柔らかさ、しなやかさ。

「海辺で」 タゴール


はてしもない 世界のうみべに
こどもたちが あつまっている。
はてしもない 大空は 頭のうえでうごかず
みずはやすみなく みだれ さわいでいる。
はてしもない 世界のうみべに
こどもたちは あつまり
さけび おどっている

こどもたちは 砂で家をこしらえる
からっぽの 貝がらであそぶ。
かれた 葉っぱで 小舟をあみ
ほほえみながら うみにうかべる。
こどもたちは 世界のうみべを
あそびばにする。

こどもたちは およぎもしらず
網をなげて さかなをとるわざも しらない。

真珠とりは 真珠をとりに
みずにもぐり あきんどたちは
船をはしらせているのに
こどもたちは こいしをあつめては
また まきちらす。
かくれた宝を さがそうともせず
網をなげるわざも しらない。

うみは笑いごえをたてて もりあがり
なぎさのほほえみは あおじろく光る。
死をあきなう なみも こどもたちには
まるで ゆりかごをあやす ははのように
意味のない 小唄をうたい
うみはこどもたちと たわむれ
なぎさのほほえみは 白く光る。

はてしもない 世界のうみべに
こどもたちは あつまっている。
嵐は道もない みずにくだけ
いたるところに 死があるのに
こどもたちは あそぶ。
はてしもない 世界のうみべに
こどもたちの大きなあつまりがある。

『アジア・アフリカ詩集』(高良留美子訳)




老子と荘子の紹介をどのようにするのか迷っているときに、タゴールのこの詩を思い出した。『ギタンジャリ』(森本達雄訳 第三文明社 レグルス文庫)で読んだときに、どうも僕のタゴールとは違うと感じたのは、僕のタゴールは高良留美子訳で世界づけられていたからだと気づいた。たとえば、「Thou」を「おんみ」と訳しているのだけど、それでは一神教の神になってしまう。訳が僕のタゴール理解を邪魔するのだ。幸いなことに、『ギタンジャリ』は英語の原詩もあるので、自分で訳そうかなと思って試していると、高良訳があった。この訳よりもいい訳を僕が作れるわけがないので、この詩については訳すのを止めた。ちなみに、森本訳ではこうなる。

「涯しない世界の海辺に 子供たちが集まる。頭上には 無窮の空が じっと身じろぎせず、動きやまぬ浪が 騒々しい。涯しない世界の海辺に 子供たちが集まって、叫び、踊っている。」

「海は 高らかに笑って 波立ち、渚の微笑は かすかに碧白くきらめく。死を売り歩く浪たちも 子供たちには 意味のない唄をうたって聞かせる──揺籃を揺り動かすときの母のように。海は 子供たちと遊び、渚の微笑みは かすかに碧白くきらめく。」

森本訳では、タゴールの瑞々しさ、柔らかさ、しなやかさが生きてこない。僕がタゴールから受けた感動は、瑞々しさ、柔らかさ、しなやかさなのに。そして、老子や荘子から得た感動も、瑞々しさ、柔らかさ、しなやかさなのだ。

老子は難しい。老子の難しさは、どうとでも読めるというところにある。僕の手元にあるのは、小川環樹訳で、これはこれで素晴らしい訳だと思う。だけど、僕は老子の瑞々しさ、柔らかさ、しなやかさを現代の日本語で再現してみたい。高良留美子訳のようなことばづかいにはならないと思うけど、高良訳のタゴールは一つの指標となると感じた。

なぜ、老子なのにタゴールなのか。老子を理解するときのキーワードは「道」であり「自然(じねん)であり、「無為」である。それは、「水」と「子ども」でイメージされるものだ。老子の「水」と「子ども」はタゴールのこの詩ので出てくる「なみ」「海」「子ども」の使われかたとほぼ同じだと思ってよい。

僕はこれから、何度でもこの「海辺で」という詩に戻ってくるだろう。老荘の紹介はたぶん失敗するだろう。でも、僕のこれから考えたり感じたり表現したりする営みの源にこの詩を置くことは変わらないような予感がする。

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